【書評・要約】小説 長いお別れ (ネタバレ)
中島京子さんの 小説 長いお別れ 読みました。
校長職を終えた昇平が、認知症になり、症状が進行していく話です。
中島京子さんの実体験をモデルにした小説のようです。
認知症に関しては、自分がなる可能性もありますし、全く関係ないとはいいきれません。
かといって、勉強したこともなく、ニュースで少し目にする程度でした。
かつて中学の校長だった東昇平はある日、同窓会に辿り着けず、自宅に戻ってくる。認知症だと診断された彼は、迷い込んだ遊園地で出会った幼い姉妹の相手をしたり、入れ歯を次々と失くしたり。妻と3人の娘を予測不能なアクシデントに巻き込みながら、病気は少しずつ進行していく。あたたかくて切ない、家族の物語。中央公論文芸賞、日本医療小説大賞、W受賞作。
小説好きな方、長いお別れもう読んだという方、一緒に読んでいきましょう。
長いお別れ の目次は、こちら
- 全地球測位システム
- 私の心はサンフランシスコに
- おうちへ帰ろう
- フレンズ
- 入れ歯をめぐる冒険
- うつぶせ
- QOL クオリティ・オブ・ライフ
メリーゴーランドに乗ろうとする姉妹の話から始まります。
姉妹は、幼すぎて遊園地のメリーゴーランドに乗れません。
大人が必要だと、係の人に断られてしまいました。
そこに登場した老人に力を借りようとします。
何かの伏線でしょうか?
5年生の姉と3歳くらいの妹を二人で遊園地にいくことに許可を出したことに疑問を投げかけたいと思いましたが、無事着けてるので、何よりです。
誕生祝い
東昇平は、認知症を患い、症状が悪くなっていきます。
昇平には、3人の娘がいます。
長女の茉莉は、アメリカに住んでいます。
次女の菜奈は、一番連絡がつきやすいです。
三女の芙美は、独身で忙しいようです。
昇平の妻の曜子は、昇平の誕生日に3姉妹をよび、お祝いを企画していました。
そのころ、昇平は、自転車にうまく乗れなくなっていたようです。
これも、認知症の症状でしょうか?
また、出かけると迷い、家に戻るのが遅くなる時があるそうです。
最初は、頻繁に物がなくなったり、記憶違いが続いていました。
そして、数十年続いている2年に一回の同窓会にたどり着けなくなりました。
同窓会はどうしたかと言う妻の問いかけに、”なくなったんだ”と答えて、部屋へ閉じこもってしまいました。
曜子が確認したところ、同窓会は、開催されていました。
昇平、妻の曜子が、昇平の認知症に確信をもった場面でしょうか。
認めたくないものを認めざるえなかった、とても切ないシーンでした。
誕生会の当日には、全員のケーキの下の銀紙をのばし始めました。
なんでも銀紙のようなものを収集しているそうです。
とくに大事な話もなく、一生懸命に3姉妹を集って、お祝いをした曜子を娘たちが軽く非難したりします。
曜子の今後どうなるかわからない、今を大切にしたいという気持ちが、なんとなくわかります。
姉妹からの誕生日のプレゼントはGPS機能付きの携帯電話でした。
後日、早速役に立ちます。
昇平が、行方不明になってしまいました。
そして、シーンは、遊園地へ戻り、子供と一緒に無事に?メリーゴーランドどに乗ることができました。
昇平は、姉妹と楽しい時を過ごし、幸せを感じています。
ずっと幸せでいて欲しいです。
長女の住むアメリカへ
長女の茉莉は、アメリカに住んでいます。
昇平と曜子が、長女の茉莉がいるサンフランシスコへと向かいます。
間があいたのか、認知症の症状が進んでる気がしました。
頻繁に どこに行くのか? を繰り返しています。
サンフランシスコ国際空港には、長女の茉莉と夫、2人の息子が迎えに来ていました。
昇平は、サンフランシスコについてからも、どこにいるか忘れてしまい、故郷の静岡の地名が口から出てきます。
昇平は、もと校長先生で、孫から見ても威厳がありましたが、かわってしまった祖父をみて悲しくもあったようです。
ただ、すぐ忘れてしまうのをいいことに、お小遣いを何回かもらおうとしています。。
昇平夫妻の滞在中に、長女の茉莉の夫(新)の同僚とのパーティーが開催されることになりました。
なぜだか、話が、夫(新)の元彼女に伝わり、参加することとなりました。
一波乱 あるか?? と思いましたが、そうでもありませんでした。
ただ、やりとりは、面白かったです^^
曜子だけは、元彼女の存在に気づき、長女の茉莉に言うか言わないか、迷っていました。
結局言いませんでしたが、言っていたら、荒れていたでしょう^^;
地元の静岡へ
アメリカに行ってから2年たちます。
昇平は、高齢者通所介護施設に通うことにしました。
公立小学校の横にあり、時々小学校の生徒が遊びに来ることが、決め手でした。
曜子は、見学に行った日に、子供と触れ合う昇平をみて、ここに通わせたいと即決しました。
だんだんと、曜子は、そうとうな人格者だと思い始めました。
暗さを見せず、常に明るく接しています。
昇平のことを思って、いろいろと行動しています。
その努力が、どのような結果になっていくのでしょうか。
デイサービスセンターでは、昇平は、女性職員と仲良くしているようです。
これは、曜子の良さを引き立て、悲しい展開になるのかと警戒してしまいます。
長女の茉莉と2人の孫の潤、崇が、夏休みに遊びに来ています。
昇平は、このころ、しきりに ”帰りたがって” いました。
自宅にということでは、なさそうです。
ということで、みんなで、故郷の静岡に行くこととなりました。
しかし、しばらくするとソワソワし出し、”家に帰る” と言い出しました。
静岡のことではなかったようです。
”帰りたい家”がなんなのかは、この物語の鍵になりそうです!
お葬式
さらに時が立って、親友の中村先生が、亡くなり、お葬式に参加します。
そこで、久しぶりに友人と再会でき、嬉しそうに声をあげます。
友人は、昇平が、認知症だということを知りません。
友人と会話しますが、中村先生の葬儀であることをすぐ忘れてしまいます。
そして、告別式でスピーチを依頼されます。
もしかして、上手くのりきって、スピーチまでしてしまうのか?と思いましたが、違うようでした。
話がかみあわなくなり、とうとう認知症だと気付き、スピーチは、他の友人が行うこととなりました。
お葬式で、なぜか、三女の芙美をお見合いさせるという話となり、退職した先生2人が、心得を説くために、一緒に食事をすることとなりました。
こんなに、失礼な人いるのか?と思いつつも読み進めると三女の芙美が、先生に徳利を投げて話がおわりました。
ちょっと、すっきりしましたが、このくだりは、何かの伏線でしょうか?
デイサービス
認知症の発症から7年、デイサービスに通って、一年経ちます。
昇平は、デイサービスに楽しく通っています。
若い女性の職員と仲が良く楽しいようです。
そして、デイサービスのことを学校と呼ぶようになります。
連絡帳には、職員が仲良しの方(男性2人)とお話ししていましたと書かれたりしていて、曜子は喜びます。
そして、ある日、曜子がデイサービスを訪れます。
あぁ、何か起こるのか??起こらないでほしい。。
特に、なにもなく、仲良しの方と食事をしてるだけでした。
関東大震災
関東大震災がおきます。
2011年くらいの話ということですね。
そして、震災の次の週に病院の予約が入っているようでした。
半年前に予約し、認知症に効くといわれている新薬が手に入るかもしれません。
曜子は、指折り数えてこの日を待っていました。
キャンセルしたら、また半年待たないといけない、その間に昇平の症状が進んでしまうかもしれない。
雨が降ろうが槍が降ろうが放射能が降ろうが、わたしは行きますからね!
曜子の気持ちが伝わってきます。
そして、医師から新薬の処方箋を手に入れることができます。
しかし、薬を作ってるのが東北で、薬は手に入りませんでした。
後日、アメリカの長女の茉莉を経由して手に入れることができました。
あきらめないの大事ですね!
三女の芙美が、ほぼ失恋して実家にいた時、昇平と二人になります。
昇平は、意味不明な言葉を発するようになっていました。
ショックを受けながらも、三女の芙美は、理解しようとします。
なんとも切ないシーンでした。
後日、また三女の芙美と昇平が、電話で話す機会ができ、失恋したことを打ち明けます。
意味不明な言葉で、励まされるシーンもなんだか温かい気持ちになりました。
それか!
工藤晴夫の母も認知症を患っていて、息子のことが息子だとわからないようでした。
久しぶりの再会でプレゼントを渡すと、母は、喜びました。
お礼に、プレゼントをもらいます。
ちょっとジーンと来るシーン。
この伏線は、別の感動を生むのでしょうか?
昇平は、入れ歯をしているようですが、頻繁に壊れてしまうようです。
そして、よく失くなってしまいます。
孫が一回、探偵のように見つけてくれたので、後日、電話をしてまた意見を聞きます。
ヒントが少なすぎて、「誰かにあげちゃったんじゃないの?」などと言っています。
また、適当なことをと思ったら、あってました!
将太すごい!
そうです。
物語の中に、突然現れた、工藤晴夫が、母からもらったプレゼントでした。
そういう伏線!
曜子も大変!
妻の曜子も目の病気になってしまい、手術と入院することになってしまいました。
失明の危険もあります。
曜子は、自分のことよりも昇平のことが心配でなりません。
昇平はどうなる?と気になるところでしたが、なんとか娘たちが面倒を見てくれます。
娘たちは、普段、昇平の面倒を見ることに慣れないので、とても苦労します。
曜子のすごさが、際立ちます。
しかし、なんとかなって、ほっとしました。
曜子の入院は、娘たちにも今後のことを考えるきっかけとなりました。
長女の茉莉は、アメリカに住んでいます。
次女の菜奈は、一番連絡がつきやすいですが、妊娠しました。
三女の芙美は、独身ですが、忙しいです。
それぞれ違う生活があって、距離を感じていた3人でしたが、だんだんと近く感じられました。
一方、網膜剥離の手術を受けた曜子は、うつぶせの状態を保たなくてはいけません。
しかし、強気で、夫を思う気持ちは、まったく変わりません!
早く直したい、少しでも早く退院したい、早く旦那のもとに戻りたい!
願いが通じた?のか昇平は熱が出て、曜子と同じ病院に入院することになりました。
二人の再会に心が少しなごみました^^
お別れ
曜子は、努力の甲斐あって、早く退院できます。
しかも昇平と同じ日に退院できます。
よくがんばりました!
もう認知症が発症してから10年になります。
いろいろなことを忘れていったが、長い結婚生活で存在した何かで今もコミュニケーションを保っているのだそうです。
自分のことを忘れてしまっても曜子は気にしません。
ええ、夫はわたしのことをわすれてしまいましたとも。で、それが何か?
夫婦の絆について考えさせられました。
昇平は、弱っていきます。
異常は発見されませんが、熱が出て再び入院することになりました。
このようなタイミングは、わかるものなのでしょうか?
長女もアメリカから帰国します。
そして、最後の日は、帰らない方がよいと言われていました。
最後は、アメリカの昇平の孫である崇が、校長先生に呼び出される場面で終わります。
英語では、認知症を患ってから本当のお別れをするまでを ロンググッドバイ(長いお別れ)と言うそうです。
いい校長先生で、いい終わり方だと思いました。
感想
たびたび現れていた場面で、薬を飲ませる攻防やトイレ、着替え、お風呂、病院へ通うなど、介護の大変さを感じました。
お金のことも考えないといけません。
実際に、自分が行うことになったら、本当に大変なんだろうと思います。
娘たちは、自分たちの生活があって、しかし、親を思う気持ちも感じました。
そして、曜子の夫を思う気持ちもすごいと思いました。
名前を忘れてしまった夫の面倒を最後まで成し遂げました。
長年の夫婦の絆でしょうか?
曜子の人格でもあると思いました。
責任感が強く、ポジティブで、真摯な姿勢のおかげで、まったく物語に暗さを感じませんでした。
長いお別れ は、映画になっているようです。
僕は、小説を読み終わった後に、映画やドラマがどのようにキャスティングされているのか見るのが好きです。
最初に見てしまうと、役者の構成で小説を読んでしまうので、避けています^^;
さぁ、誰が、演じていたのでしょうか?
昇平は、山崎努さん、曜子は、松原智恵子さん、少し想像と違いましたが、わかる気がします。
映画を見てみたいです。
最初のメリーゴーランドの子供2人の意味は、あまりわかりませんでしたが、解説で解説されてました。
年を取ると、子供になっていく、これから人生を始める子供と終えていく子供(老人)の人生が交あった場所です。
深いですね!
そして、気になっていた、どこに帰りたいかは、わかりませんでした。
個人的には、もとに戻りたい、病気の前に戻りたい、若い頃に戻りたい、子供の頃に戻りたい、ここは何か違うというニュアンスなのかなと思いました。
あたたかくて、切ない、いい小説でした^^
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました!
小説好きな方、こちらもどうぞ!
映画も観ました!
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