【書評・要約】少年と犬 読みました(ネタバレ)
馳 星周 さんの小説、少年と犬 読みました。
第163回 直木賞受賞作です。
著者は犬好きなのでしょうか?
著者の犬にまつわる他の作品も気になります。
少年と犬 読んだ方、読まないけど内容が気になる方、一緒に読んでいきましょう!
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……
紹介文
犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!
和正。。
一匹の犬が、男と出会うところから話が始まります。
男は、コンビニの前で、犬の多聞に会います。
震災後で、そのような犬も多かったのかもしれませんが、野良犬のような姿であれば、警戒しそうなものですが、話しかけて、ササミジャーキーまで買い与えています。
和正、やさしいですね^^
もしくは、多聞にそう思わせるような、それだけの気品があっったのかもしれません。
そして、置いて行けずに車で一緒に連れて行きます。
盗品の売買をやっている先輩の下で、和正は働いています。
運転がうまいので、泥棒の運転手の仕事を頼まれます。
母が、認知症でお金が必要な和正は、承諾することになりました。
しかし、なぜ多聞を毎回現場(泥棒の手助け)に乗せて行くのかは、理解できませんでした。
助けてくれそうなオーラが、多聞から出ていたのでしょうか?
たしかに、多聞は、落ち着いていて、人の言うことをしっかり理解してそうで、賢いです。
認知症の母は、和正のことも忘れていました。
母は、多聞のことを昔飼っていたカイトと思い、喜びます。
姉も含め、母、和正、多聞とみんなで散歩へ出かけました。
途中、リードを持った母が飛び出してしまい、トラックに轢かれそうなところを多聞が立ち止まったことで助かります。
こんなにすごい犬がいるんですね!
もともと盲導犬だったのでしょうか?
多聞は、常に南側を意識しています。
和正が、手助けする泥棒は、ミゲルを含めた外国人3名です。
ヤクザの依頼で盗みを働き、手数料をもらうはずでしたが、手数料が惜しくなったヤクザに裏切られます。
そして、いざこざの中で、なんと和正が事故で死んでしまいました。。
和正死ぬのかー。。
認知症のお母さんと姉とうまくいくことを望んでました。
今後のお母さんと姉が、気になります。。
ミゲル。。
泥棒のミゲルは、いざこざの中で唯一逃げ出すことができました。
ミゲルは、多聞のことを気に入っていたので、一緒につれて日本を出るために新潟を目指します。
多聞が一緒だと、逃走に不便が出そうですが、とても気に入ったのですね。
ミゲルは、幼い頃に犬とのいい思い出があります。
友人もいない中、寄り添ってくれていたのが犬でした。
ミゲルが逃げた情報が、警察に知れていて、警察に追われているようです。
警察につかまるのかな?と思ったらヤクザの方に先に見つかりました。
多聞は、引き続き南を向いていて、誰か他の人を思っているようですが、ミゲルは、それでも多聞と一緒にいたいようです。
途中の道の駅で、再度ヤクザにみつかり、車を手放します。
そして、ヒッチハイクしてトラックに乗せてもらえました。
優しいトラックの運転手がいてよかったです。
運転手の方も犬が家にいて、犬を素晴らしいと思っていました。
ミゲルは、昔一緒だった犬が見つけた銃が原因で、両親が殺されました。
人間の社会のルールの中で、犬の行動が原因のようにも思えますが、当然、犬は悪くなく、人間社会の濁った感じを映し出されてるように思いました。
ミゲルは、今回で泥棒から足を洗って、多聞、そして両親が亡くなった後に、一緒に生きてきた妹と過ごすつもりのようです。
しかし、なぜか多聞を放してしまいます。
そして、ミゲルはヤクザに捕まったのでしょう。
死体となって発見されました。。。
うわぁ〜、ミゲルもかー。。
ミゲルも自分が捕まるということをうっすら感じとっていたのですね。
大貴、勝手だな。。紗英、がんばれ!
トレイルランニングという山中を走るレースの練習をしている大貴と多聞が、山の中で出会います。
多聞は、山中を歩いてきたので、汚れています。
熊の気配を察した多聞が、大貴を助ける形になり、そのまま家に連れお世話になることとなりました。
しかし、大貴は、自分でなく、奥さんの紗英に、お世話を全て任せてしまいます。
多聞のことだけでなく、稼ぎのこと、家のこと、生活のこと全てを紗英に任せっきりでした。
紗英は、多聞に思い入れのある名前を付けようとしますが、大貴の思いつきの名前になってしまいます。
大貴は、趣味のトレイルランニングとスキーを中心に、日々を過ごしています。
紗英の商売が軌道にのると働かなくなったようです。。
大貴、勝手な人だなぁ〜
多聞の名前のやりとりの場面は、特にいらっとしましたw
紗英も大貴には、愛想を尽かしているようで、我慢している様子です。
紗英も昔、犬を飼っていて、多聞と絆が深まっていきます。
紗英がんばれ!
紗英は、畑仕事に家事、通販、多聞の世話で手一杯です。
多聞は、散歩を大貴にするように促します。
すごすぎる!
リソース配分まで、できますか?
大貴が、散歩をするようになりますが、同じコースに飽きて、遠出することになりました。
多聞と大貴が出会った山へいきます。
散歩のつもりが、本気になっていく大貴。。
多聞がどこか行くか不安なので、つけていたリードも、持つのが煩わしくなり外してしまいます。
逃げちゃうのかな?
逃げませんでした。
もう少しで休憩というところで、多聞が、吠えます。
無理に動きを静止した大貴は、足に限界がきていて、バランスを崩し 、崖を落下してしまいました。。
大貴もか。。
しかし、なぜ吠えたのか疑問です。
まさか、紗英のために大貴を殺すことはないと思いましたが、少し思いました。
熊が先にいたのでしょうか?気を付けろというサイン?休憩を促した?
そして、リードは、とっておいてよかったです。
紗英は、辛かったですが、今後、仕事を増やし、犬を飼い、前向きに暮らしていけそうです。
紗英がんばれ!
美羽。。どうして。。
今度は、山中で、美羽に出会います。
山中で、土が爪の中にも入っていて、泥まみれのスコップがあり、ブルーシートも車に積んでいて、怪しい感じです。
倒れて、怪我している多聞を救けるため、車に乗せます。
多聞は、本当に優しい人たちに恵まれていて、よかったです。
美羽は、多聞を病院に連れて行ってくれ、飼い主が見つからなかったので、飼うこととなりました。
美羽が山に埋めたのは、元彼氏のようです。
元彼氏は、木村という男に借金があり、木村が美羽のところに取り立てに来ます。
どうなるのかハラハラする展開です。
ある日、美羽が家に帰ると、多聞が倒れていました。
鍵もかけずに、病院へ連れて行きます。
木村が、家にはいっちゃう!?と思いましたが、そんなことはなかったです。
多聞も一週間くらいでよくなるということで、よかったー。
木村は、美羽が、元彼氏を殺したことに気付き始めます。
美羽は、しょうがなく要求された50万円を用意します。
渡さないほうが、よさそうだなぁ〜。
渡したら、もっと要求してきそうです。
元彼氏は、ギャンブルにのめりこんでいて、美羽のお金も使っていました。
元彼氏の借金を返すため、頼まれ、美羽は、風俗の仕事をするようになったようです。
元彼氏は、最悪だなぁ〜。
でも美羽も断るべきですね。。
そして、ギャンブルで勝った時、元彼氏は、他の女性と浮気していました。
そこで、美羽はキレて、犯行におよんでしまったようです。
最終的に、客を殴って、美羽は、自首します。
どうしてこうなってしまったんでしょうか?
美羽はもともと、優しい両親と普通に過ごしていたようでした。
自首の前に、身辺整理し、車でできるだけ、多聞の行きたがってる方向に行ってあげます。
複雑で、難しい状況でも、美羽の多聞を思う気持ちに少し、心があたたまりました。
弥一。。不器用(泣)
弥一は、山の中の自分の家の前で、多聞と出会います。
弥一は、もと猟師で、家にいっぱいお肉があります。
多聞、よかったね!
弥一は、以前に猟犬を飼っていたので、犬のことは詳しそうです。
病院に連れて行って、健康チェックをしてくれました。
弥一は、猟師を引退していますが、町一番の腕前でした。
職人気質で頑固っぽそうです。
弥一は、癌でした。
奥さんも癌で亡くなっています。
奥さんが、家で死にたかったが、病院で死んでしまったことを後悔していて、弥一は、治療せずに、家で死ぬ決意をしています。
そして、多聞は、その死の匂いを嗅ぎ分けてやってきたと弥一は考えています。
そういえば、全てのストーリで、死者が出ています。
多聞の宿命なのでしょうか??
死を嗅ぎ分けて、見とっているのでしょうか?
守護神として、守ろうとしているのでしょうか?
弥一は、癌のことを娘にも話していませんでした。
最後に伝わってしまうのですが、もっと早く話していれば、もっといい最後を迎えられたように思われます。
体調の悪い弥一に、熊の退治の依頼がありました。
最終的に引き受けることになります。
熊とのやりとりで死んでしまうのでしょうか?
病気で死んでしまうのでしょうか?
熊を退治して、力尽きるのでしょうか?
などと考えていましたが、町が雇った部外者に誤って射殺されてしまいます。
そんな。。
ちょっと、悔やまれる終わり方でした。。
ただ、多聞が横にいてくれてよかったです。
光っ!!多聞っ!!
多聞は、やっと向かっていた目的地にたどり着くことができました。
今まで、いろいろな困難がありました。
やっと幸せな生活が、ここから始まるのかな?
多聞は、山で、保護され、病院に連れて行ってもらいます。
保護してくれた人の家族も、多聞の飼い主として登録された家族同様に、岩手出身です。
岩手の知人を通して、5年前の震災で、飼い主が亡くなっていることを確認しました。
保護してくれた内村さんが、登録して、新しい飼い主となりました。
息子の光は、震災後にショックで喋らなくなってしまいました。
笑顔もなくなっていた光は、多聞と会うと笑顔を取り戻しました。
そして、なんと喋ることもできるようになりそうです。
多聞は、光を追って岩手から熊本まで来たことが判明します。
もとの飼い主が、多聞と公園にいるとき、光もおばあちゃんに連れられて公園にいき、よく会っていました。
すごすぎる!
ハッピーエンドかと思いましたが、違いました。。
熊本で大きい地震が発生します。
光を庇う形で、多聞は、死んでしまいました。。
苦労の連続だったのに、手に入れた安穏は、ほんの少しの時間でした。
震災後、多聞は、1歳にもなっていなかったようです。
5年間の旅を終えて、到達した目的地で死を迎えることとなりました。
悲しい終わり方でした。
感想
昨年から僕も犬を飼い始めて、共感できる部分や知らなかったので、勉強になった部分もありました。
- 1日2回、30分以上の散歩に連れて行くべき
- ドッグフードは、ぬるま湯で蒸らしたほうがいい
- ドッグフード食べた後、すぐに水を飲むとよくない
- 食後すぐ散歩させない
- 人間の感情の動きに敏感
また、すごすぎるだろ!と感じた部分もありました。
- リードをコントロールしなくても適度についてくる
- 友人の居場所がわかる
- 玄関から上がらないなど自分の立場をわきまえている
- じっとするときは、じっとしている
- シャンプーするときもじっとしている
- 食べていいというまで食べない
- リソース配分ができる
こんな奇抜な名前で、盲導犬のように賢い犬を普通のおばさんが、育て上げたとは考えられません。
もともとの飼い主は、きっとすごい人です。
そして、犬と人との関係を再度、考えさせられました。
犬っていいですね^^
多聞が関わった人が結構死んだなというのと最後は自分が死んでしまったなという部分で、何か深い意味があるのかと思っています。
うまくいかない人間社会の中で、もがく登場人物たちを多聞は、最後まで、守ろうとしていました。
最後、少年を助ける形で死んでしまったことで、最初から最後まで多聞の行動は、一貫してたのだなぁと感じました。
ストーリーも様々な人間模様を犬と一緒に過ごすことで照らし出され、楽しく読むことができました。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました!
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